共通の目標、異なる視点

EUと日本は、持続可能で包括的な成長という目標に向かって邁進しています。同時に、目標を追求する両者のやり方は対照的であり、特に開発協力の分野ではそれが顕著です。このユニークな状況は、日EUパートナーシップに大きなチャンスをもたらします。なぜなら、多様なルートで頂上を目指すことで、成功の可能性が高まるからです。

共通の目標を念頭に置きながら、両者のアプローチがいかに対照的であるかを見ていきましょう。EU諸国が援助活動と民間の利益を切り離すことを原則としているのに対し、日本は他のアジア諸国と同様に、援助、直接投資、貿易を統合することにこだわってきました。

また、EU諸国は、民主主義、良き統治、市場メカニズムと貧困削減との関係を繰り返し強調していますが、日本は他のアジア諸国とともに、個々の社会から生じる内生的価値を優先しています。

このような歴史的背景を踏まえ、EUと日本は、持続可能で包括的な成長という共通の目標を念頭に、多様な価値観や見方が相互補完することの可能性を今後さらに追求していくことが期待されます。

 

下村恭民
法政大学名誉教授。法政大学人間環境学部教授、国際協力銀行(JBIC)理事などを歴任。日本の開発協力に関する著書・論文多数。

(イラスト:vecteezy.com)

下村恭民

下村恭民
法政大学名誉教授。法政大学人間環境学部教授、国際協力銀行(JBIC)理事などを歴任。日本の開発協力に関する著書・論文多数。

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