スリランカ:化石燃料からの移行に関する課題と可能性
地球温暖化の原因となる化石燃料から100%再生可能エネルギーへの移行を促進することは、EUと日本が持続可能な連結性を推進するために定めた2019年の合意目標を実現できる重要な分野です。
スリランカの事例は、エネルギー移行で他国を支援する上で、EU・日本間の協力に大きな可能性があることを浮き彫りにしています。スリランカの野心的な気候変動に関する目標、特に2030年までに再生可能エネルギーによる電力を70%まで引き上げ、2050年までにエネルギーの100%カーボンニュートラルを達成するという目標を支援することができます。
スリランカの気候変動目標は最近の金融危機により打撃を受けましたが、この国が輸入エネルギーに大きく依存していることによってさらに悪化しました。石油はスリランカの最大の輸入品であり、第2位の品目の2倍以上の輸入額になっています。スリランカの気候変動目標の達成を支援することは、エネルギー自給と持続可能性の実現にもつながり、最近の金融危機の再発防止にも寄与するのです。
EUと日本は、いくつかの分野で専門知識を結集することにより、スリランカの気候変動目標の達成を支援できます。供給面では、相当規模の洋上風力発電の開発を支援することが可能です。
さらに重要なのは、風力発電や太陽光発電の供給パターンに合わせて電力需要を管理するスマートグリッドの開発を支援できることです。また、太陽が照らず風が吹かないときに使用するために、太陽光発電や風力発電の余剰電力を貯蔵するグリッドバッテリーやEVなどの蓄電インフラの開発も支援できます。
ポール・ミッドフォード
明治学院大学国際学部国際キャリア学科教授。近著に『Overcoming Isolationism Japan's Leadership in East Asian Security Multilateralism』(Stanford University Press, 2020)、『The Senkaku Island Confrontation and the Transformation of Japanese Defense』(Palgrave, 近刊)がある。